ハマサンス コンプリートライフ

ハマサンスは遠方にいる友人のハマクラシーへ声を発信し続ける。 どうでもいいことばかり話し続ける。

職場での怖い話

手形

「雨天時に走行する車の中雨天時に走行する車の中」のフリー写真素材を拡大

 

 

 

 

 今回は、以前勤めていた職場での不可思議な体験を振り返る。

 

 

当時、デイケアという所で僕は働いていた。

 

デイケアというのは、簡単に説明すると、地域に住まわれる高齢な方たちを自宅から送り迎えし、入浴や食事、リハビリなどの活動をサービスとして提供する場所だ。

 

その日僕は午前7時30分頃に職場に着き、職員用の入り口からデイケアに入った。
すると、先に着いていたスタッフの一人が声をかけてきた。

 

 

スタッフ「あれ?ハマサンスさん。今来たんですか?もうさっきからいたと思ったんですが・・・」

 

 

僕「いいえ。今着いたばかりですよ?」

 

 

スタッフ「あれ~、おかしいな。確かにいた気がするんだけどなあ」

 

デイケアのスタッフは職種がいくつかあって、その職種によってユニフォームの色が 若干違っていた。僕はリハビリを提供する仕事をしていたが、仕事着は白衣でそれを着ているのは基本的に自分一人だった。他の介護スタッフは男性が水色、女性は桃色のユニフォームだった。

 

だから白い服を着ているスタッフはここでは僕一人のはずなのである。

 

そのスタッフは、僕が到着する前に白い服を着た人物を見たので、てっきり僕が早く職場に来ていたと思い込んでいたのだ。

 

 

僕はこの時点ではフ~ンくらいにしか思っていなかった。

 

 

しかし、その日は変な一日だった。

 

 

デイケアの利用者が帰る時刻になって、急に送迎用の車が一台動かなくなった。

 

また、利用者をトイレへお連れしたあるスタッフが「トイレのドアが勝手に開いた」といって騒いでいた。トイレに連れられた利用者もそれを見たらしくえらく興奮していた。

 

「変なことは続くもんだなあ・・・」この時点で僕はまだ、その程度の感情だった。

 

 

一日の業務が終わり、一人また一人とスタッフたちが帰っていった。

その日僕は残業で一人残り書類業務をしていた。

 

深夜ではないものの、広いフロアにスタッフが自分一人というのは寂しい。特に日中は変なことが立て続けに起こったからちょっぴりその現場に薄気味悪さも感じていた。

 

夜8時を過ぎ、書類がひと段落ついたので家に帰ることにした。

 

服を着替えた後、広いフロアやスタッフルームの電気を一つずつ消してゆく。この作業がこの日は特に怖く感じられた。

 

外に出て広い職員用駐車場の中に入る。自分の車だけがぽっかりと暗闇の中に一台たたずんでいる。

 

車の鍵をポケットから出してドアを開けようとした。その時!

 

 

「!!?」

 

 

フロントガラスに誰のものかわからない“手形”がびっしりついていた。

 

相当びっくりしたが、同時に、「はは~ん」とも思った。

 

スタッフのいたずらだと思ったのだ。

朝、自分に「あれ、もう来てませんでしたっけ?」と声をかけてきたスタッフの仕業だと。

朝に白い服を着た人を見たというのはそのスタッフのフェイクで、このいたずらの効果を高める前振りだったのだと瞬時に悟った。

 

いたずらにしてはやり過ぎだろうと思いもしたが、そう解決した方が心穏やかに帰れると思った。

「やれやれ、一杯食わされた」と思いながら、その場にあった送迎車のガラスの朝露を拭きとるためのタオルを取って、その手形のついたフロントガラスを拭いた。

 

 

・・・手形がとれない。

 

 

 

もしかして!

 

僕は急いで車の鍵を開けて中に入った。

 

フロントガラスを内側から拭いてみた。

 

手形が消える。

 

 

手形は全部車の内側からつけられていた。

 

ビビりまくって急いで手形を全部消した。

 

エンジンをかけると逃げるように駐車場を後にした。

家に帰る途中、信号待ちしていると、赤信号の光の反射で消し損ねたいくつかの手形が不気味に映し出されてものすごく怖かった。

 

翌日、スタッフ達ににそのことを話したが誰も身に覚えはないとのことで、お互いにとても怖がった。  

 

 

 

結局、あの手形は何だったのか?

 

鍵のかかった車の内側からどうやって何者がつけたのだろうか?

 

そして、スタッフがあの日の朝に見た“白い服を着た謎の人影”は何だったのか。

 

 

つながりそうでつながりもしないが、まあ、そういう場所だったのだろう。

 

その後自分の車に同じ現象は二度と起こらなかったが、
今思い出してもゾッとする怖い体験だった。