ハマサンス コンプリートライフ

ハマサンスは遠方にいる友人のハマクラシーへ声を発信し続ける。 どうでもいいことばかり話し続ける。

幽霊が見える人 第2話

幽霊は見える人には見える。

 

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そう確信した時が人生で3度ある。

前回は子供の頃に確信した話。

 

今回は中学1年生の時の話。

 

 

どこかの記事でも書いたが、僕は中学1年生の時カトリックの修道院の中で生活をしていた。当時修道院には中学1年生から高校3年生までの生徒が入っていて僕を含めて8人が生活していた。

 

修道院の中の構造は玄関があって地下1階があり、地上3階まである。

玄関から入ると中央に階段がありその両側に通路がありそれぞれの部屋や教室がある作りになっている。

 

1階は娯楽室や祈る場所いわゆる聖堂、チャペルがある。
そして修道院の校長である神父室があるのもこの1階だ。

2階は階段を上がって右に行けば寝室。左が学校と同じ風景の教室。
そして、客人が来た時に泊まれるための小部屋があった。

3階は右が自習室で、左が物置部屋になっていた。

寝室や自習室の前にはトイレや洗面所があった。いずれも大体学校にあるものと同じ広さだ。

地下には食堂があり入り口の前に暗いトイレがあった。

 

 

この修道院ははっきり言って怖い場所だ。

 

みなさん古い小学校校舎で10人くらいで生活できますか?こわいでしょ?

そんな毎日肝試し状態な環境で僕は中学1年から3年の夏まで過ごした。

 

福岡大空襲の日(619日)は修道院の自習室の窓に兵隊たちの姿が浮かび上がるといった話があったし、実際この修道院が経っている場所は戦時中空襲にあった時に多くの死体を焼却した場所らしい。自分が在籍中に修道院の建物の下から小規模の防空壕が発見されたこともあった。

 

通常修道院の一日の流れとしては、学校から帰ると5時半までは自由時間。
5時半からお祈りの時間があって、6時に夕食。
食べた後に730分まで自由時間。
そのあとは9時まで自習時間。
9時におやつが出て、みんなで食堂でそれを食す。
その後は就寝するか自習を続けるかはそれぞれで判断して行動する。
もちろんテレビやゲームなどは許されない。娯楽室にテレビはあったが先輩たちが使っていたので下っ端の自分たちは部屋に入ることすら遠慮していた。

 

ある日、中1の僕より二つ上、中学3年生の先輩が夜の9時過ぎに食堂へ向かった。おやつを遅れて一人で食べに行ったのだ。

 

その他の7人の修道院生はみなすでに食堂でおやつを食べ終えていて、自習室でそれぞれ自分のことをしていた。

 

 

一人でおやつを食べに行った先輩が、しばらくすると、猛スピードで自習室へ走ってきた。

ハアーハアーと息切れが激しい。かなり取り乱している。

7人の修道院生が何事だとその先輩に聞くと、

その先輩は振り絞る声で「で・・・出た。  幽霊が・・・出た・・・」

みんなが「えええ~~~~~!!?」

 

先輩が激しく呼吸をしながら続ける。

話はこうだ。

先輩がおやつを食べようと思って食堂に向かう階段を下りていたところ、食堂前のトイレに何か気配を感じたそうだ。その時トイレは入り繰りのドアが完全に開いていたそうだ。階段途中のあたりで足を止め、じっとトイレの扉の開いた真っ暗な入り口を見ていたら、白い人影が入り口からブワっと浮かび上がってきたそうだ。はっきりとその物体を確認したのではないが、その白いもやのようなものは着物を着た女性のように見えたという。

 

そこで、その霊を見てしまった先輩は急いで振り返り階段を走って上った。途中で幽霊に追いつかれたら怖いから聖堂に逃げ込もうか、神父室へ逃げ込もうか、走馬灯のように考えをめぐらしながら、しかし夢中で結局最上階の皆が集まっている自習室まで走って逃げてきたらしい。

 

その話を聞いて他の先輩たちはテンションが上がってしまい、みんなでそのトイレまで行くことになった。僕も同行しようとしたが、霊を見た先輩が僕の手を必死に握り、顔を横に振り続け、「俺をこの自習室に一人にしないでくれ。お前だけでもここに残ってくれ。俺を一人にしないでくれ。」と哀願する。その必死さから、この先輩の恐怖のほどを感じ取る事が出来た。

 

結局、他の先輩たちは6人で例の地下のトイレへ確認に向かい、僕はその震え続ける先輩と二人で3階の自習室に残った。

 

それにしても、本当の恐怖に直面した人の反応はものすごい。髪は逆立ち、顔は真っ青。とても演技だとは思えない形相だった。

 

トイレに向かった他の先輩たちは霊の姿を目撃することはできなかったが、

初めて幽霊に出会った人が本当の恐怖に直面した時の心と体の反応がものすごいことになることを、僕はこのときの経験で色鮮やかに記憶しているのだ。

 

この修道院では、他にも、数々の怖い話がある。それはまた別の機会に。

 

今回はこれでおしまい。

読んでくださりありがとうございました。